持続可能性と法研究プロジェクトとは

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この研究プロジェクトは、科学研究費基盤研究S (研究代表者:和田肇、研究課題番号:15H05726、 研究課題名:「雇用社会の持続可能性と労働法のパラダイム転換」、 年度:2015年度~2019年度)による研究プロジェクトです。

研究の背景・目的

雇用社会の劣化は、その現れ方や程度には相違があるものの、先進国に共通に見られる現象である。国際機関や各国政府は、これを克服する様々な試みを行ってきた。しかし、日本では再びこの劣化の深刻化が危惧されている。本研究は、雇用の二極化、ワーキングプア層の増加、ワークライフのアンバランス、あるいはブラック企業現象等、現在の雇用社会の現状を「持続可能性の危機」と捉え、雇用社会の持続可能性を確保・維持するためにILOが提起する「ディーセント・ワーク」、G20首脳宣言がいう「質の高い雇用の創出」、あるいは厚労省文書において主張された「厚い中間層の形成」などの理念に沿った「労働法の新たなパラダイム」を模索することを目的としている。

研究の方法

  1. 1研究課題
    まず行わなければならない作業は、雇用社会の現状を正確に分析することである。今日の雇用社会が劣化傾向にあることは、労働法や労使関係研究者のかなり共通の認識になっているが、その深刻度の理解には温度差があるようである。現在進行しているアベノミクスの雇用政策の批判的分析が中心となる。 次に、この劣化現象の原因を突き止めなければならない。それは処方箋を描くために必要な作業である。本研究グループの認識は、1980年代以降、本格的には1990年代以降の雇用政策にその主要原因があると考えている。この時期に、伝統的な労働法理論の批判的な検討から新たなパラダイム論が展開されたが、それは伝統的な枠組みの正の部分まで削ぎ落としてしまった。ここに本研究が、労働法の新たなパラダイムを模索する理由がある。 これを受けて、新たな雇用社会の(法)規制モデルを提案することになるが、それを「標準的労働関係モデル」として提起したい。そして、これを前提とした新たな立法提言等を行っていく。このモデルは、雇用社会だけをターゲットにしているのではなく、社会保障も含む労働者の生活保障システムにまで拡大する。
  2. 2研究手法
    2008年に開始した基盤研究(A)を支えるために発足した労働法理論研究会を母体として研究を推進していく。この研究会は、労働法及び社会保障法の研究者、そして弁護士等の実務家から成っており、理論と実務の架橋がなされる。 比較法研究としてドイツを中心としたヨーロッパ、そして韓国を対象とするが、今回の研究から台湾も加える。前者によりソーシャル・ヨーロッパ・モデル研究を、そして後者を通じて東アジア・モデルの構築を考えている。これらの研究成果は、シンポウムの開催と著書等の出版につなげていく。

期待される成果と意義

ILOを始めとして国際的な諸文書が提起している「ディーセント・ワーク」、「質の高い雇用の創出」、「厚い中間層の形成」といった鍵となる理念にふさわし労働法の再構築案を提起する点に、本研究の意義がある。 これらを通じて「持続可能な雇用社会」の姿を明らかにし、最低賃金制度、雇用ダイバーシティと新たな社会的包摂あるいは社会保障制度のあり方の提示、雇用平等のための差別禁止ルールのあり方、あるいは同一価値労働同一賃金原則の日本型モデルの抽出、雇用とセーフティネットの関係等についての提言、そして立法政策を提示する。

科学研究費基盤研究S

この研究プロジェクトは、科学研究費基盤研究S研究代表者:和田肇、研究課題番号:15H05726、 研究課題名:「雇用社会の持続可能性と労働法のパラダイム転換」、補助金年度:2015年度~2019年度による研究プロジェクトです。

研究組織

研究代表者 和田肇(名古屋大学教授)
研究分担者 矢野昌浩(龍谷大学教授)、緒方桂子(南山大学教授)
若手研究者 早津裕貴(名古屋大学特任講師)、徐侖希(名古屋大学特任助教)、張智程(京都大学助教)、塩見卓也(研究員・弁護士)、三浦直子(弁護士)
研究協力者(日本) 西谷敏(大阪市立大学名誉教授)、野田進(九州大学名誉教授)、萬井隆令(龍谷大学名誉教授)、脇田滋(龍谷大学名誉教授)、唐津博(中央大学教授)、浅倉むつ子(早稲田大学教授)、藤内和公(岡山大学名誉教授)、名古道功(金沢大学教授)、木下秀雄(大阪市立大学教授)、武井寛(甲南大学教授)、米津孝司(中央大学教授)、根本到(大阪市立大学教授)、山下昇(九州大学教授)、本久洋一(國學院大学教授)、相澤美智子(一橋大学准教授)、岩佐卓也(神戸大学准教授)、山川和義(広島大学教授)等、その他多数の弁護士
研究協力者(韓国) 朴洪圭(嶺南大学教授)、宋剛直(東亜大学教授)、盧尚憲(ソウル市立大学教授)、趙翔均(全南大学教授)、沈載珍(西光大学教授)、崔弘曄(朝鮮大学教授)、権焃(釜山大学教授)、金煕聲(西原大学教授)等
研究協力者(台湾) 邱駿彦(中国文化大学教授)、黄程貫(国立政治大学教授)、王能君(台湾大学副教授)、侯岳宏(台北大学副教授)、林良榮(国立政治大学副教授)等
研究協力者(ドイツ) Prof. Dr. Rolf Wank(ボッフム大学名誉教授)、Prof. Dr. Monika Schlachter(トリア大学教授)、Prof. Dr. Raimund Waltermann(ボン大学教授)、Dr. Hartmut Seifert(社会経済研究所元所長)

(2016年4月)